「木島櫻谷」展 泉屋博古館分館(東京)

生誕140年記念特別展「木島櫻谷 PartⅠ 近代動物画の冒険」展 泉屋博古館分館
2018年2月24日(土)〜4月8日(日)

少し前の日曜美術館で「漱石先生 この絵はお嫌いですか?」というタイトルで特集されていた木島櫻谷展を観に東京・泉屋博古館分館に行ってきました。
番組内で夏目漱石が酷評したと言われる《寒月》を紹介していて、番組で木島櫻谷をはじめて知った私はミーハー心をくすぐられたのと、テレビで映されたときに深く黒い濃紺のような色に見えた静寂の竹林に惹かれ実物を一目見ようと思わず出かけてしまいました。

泉屋博古館分館によると、木島櫻谷は近代の京都を代表する日本画家で円山四条派の流れをくむ重鎮今尾景年に師事し画を学び、20代前半から頭角を現し一世を風靡した。中でも動物画は高い評価を得て、明治後期から大正期にかけて分展・帝展の花形として京都画壇の竹内栖鳳と並び人気を博したそうです。

実際に20代前半の作品がいくつも展示されていましたが、大胆な構図でありながら毛並みの一本一本まで細かく丁寧に書き込まれています。どの作品の動物も存在感がありながらも、向き合って語り合ったかのごとく、どこか優しく個の尊厳をあらわしているようで対象に対する愛情ある観察眼を感じるものでした。

冒頭の《寒月》は2双からなるの大作で、月夜の雪が積もる竹林に現れた一頭の狐を描いたものですが、竹林を青や茶を感じる黒からグレイッシュなグラデーションとニュアンスのある色調で描いた作品です。近くに寄ってみると絵の具が重ねられ粒子が盛り上がり厚くボリュームのある筆致なども見てとれ、丹念に描かれているのですが、離れてみるととても静かな広がりと奥行きがありその世界にふっと入っていけます。冬の狐の顔やその佇まいは、哀愁というか深みを感じます。

漱石先生が酷評したわけは諸説推察されているようですが、今、素直な気持ちで日本画は凄いな、木島櫻谷凄いな!と鑑賞できて幸せです。  (サ)

展覧会で購入したポストカード(右下が《寒月》(部分))

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